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巡礼の山歩き、氷ノ山



氷ノ山山頂

珍しく早起きした妻を乗せて7時半前に家を出た。我が家の山歩きの慣例に照
らせば、これは画期的な早出である。そんな会話を交わしつつ、心もとないガ
ソリン残量を気にしながら、横行渓谷から大段ヶ平へ1時間ちょいのドライブ。

広場に車2台。3台目のマイカーに続いて、4台目が入ってきた。ちょうど1
年前にテントを張った場所から下界の風景を写す。昨年に比べ、秋の気配はま
だまだ薄い。8時45分歩行開始。林道脇の登山口から山道へ。

曇り空ではあったが森歩きは快適。適度な湿度と爽やかな風が心地よい。天気
予報によれば雨の心配はない。目に付くのは倒木のキノコ白いマシュマロ風
のはよく目立つ。名前を調べる気力なし。

途中で追い越して行った男性に大屋町避難小屋で再会。お互い簡単に自己紹介。
養父市から来たとおっしゃった。毎年氷ノ山には登っているとのこと。避難小
屋から20分の登りで神大千本杉ヒュッテの分岐に出る。父の散骨をしたブナ
の前に立ち、1年ぶりの再会を告げる。小さな骨のカケラはもうすっかり土に
還り、魂はこのブナに宿っていつまでもこの山に生き続けることだろう。

平坦な木道と深くえぐられた急な登山路が相互に現れて山頂へと続く。あいか
わらず目に入るのはキノコぐらい。木道に隙間にサンゴのような小さなキノコ。
かろうじて咲いていたのはミゾソバと黄色い小さなサワオトギリ。

高所湿地の古千本を過ぎると、立入禁止の古生沼を左に見て1510mの山頂。
大段ヶ平駐車場からゆっくり歩いておよそ1時間40分の行程である。足元か
ら大きく右に弧を描いて続くブン回し尾根、左の谷には舂米のスキー場を望み
ながら、オニギリとカップヌードルのお昼にする。風に煽られてアサギマダラ
が山頂に舞い上がってきた。お昼が近づくにつれ、次々と登山者も上がってく
る。山頂写真を息子に写メしたら、彼もちょうど地元の山を歩いているところ
だった。蛙の子は蛙。

物議をかもした山頂のバイオトイレも登山者に喜ばれている様子。トイレ2階
の展望所から三ノ丸方面を望む。1年前はこのなだらかな尾根を辿って三ノ丸
に達し、殿下コースから林道に下りたのだった。1時間半の林道の上り返しが
辛かったので同じ歩き方は遠慮したいが、三ノ丸へのトレッキングは魅力的で
ある。

1週間前の9月12日、コントラバス奏者の奥田一夫さんがマウンテンバイク
で下降中に転倒。運悪く亡くなられた現場は、三ノ丸のピークから南に下った
ところにある。奥田さんとは円山川でカヌーを御一緒した思い出があるから、
突然の訃報に驚いた。1週間前には元気でこの山頂から自転車で下って行かれ
た奥田さんの最後の姿を想像しながらご冥福をお祈りした。折りしも、マウン
テンバイクの男性が三ノ丸へと向かって行くのを見送った。事故の無きよう。

来た道を下る。神大ヒュッテの手前から大段ヶ平駐車場を望むことができる。
分岐のブナに別れを告げ、再会を誓う。時おり薄日が差し、木漏れ日の下りト
レッキングは快適だ。車の増えた駐車場に、山頂から1時間半弱で帰り着く。
時刻はまだ12時半である。休みの半日がたっぷりと残っている。早起きは三
文の徳、である。

エンジンをかけると給油マーク点灯。横行渓谷のぶなのしずくで清水をお土産
にする。大屋市場のGSで給油し、八鹿の道の駅「但馬蔵」に立ち寄る。八鹿
豚まんで小腹を満たし、足湯で疲労をほぐす。「谷常」で金ロールを買い求め
帰宅。残った午後の時間を清水で入れたコーヒーと紅茶でまったりと過ごす。
1年ぶりの氷ノ山、巡礼の良い山歩きとなった。

※撮影:D90+SIGMA10mmFE,SP90MACRO

 【 登山日 】10年9月20日(月)
 【 目的地 】氷ノ山(1510m)
 【 山 域 】但馬
 【 コース 】大段ヶ平〜山頂ピストン
 【 天 候 】曇り時々晴れ
 【メンバー】たじまもり夫婦
 【 マップ 】持たず(エアリアマップ「氷ノ山」参照)
 【 タイム 】大段ヶ平P8:45…神大ヒュッテ9:45…氷ノ山山頂10:25-11:00…
       神大ヒュッテ11:30…大段ヶ平P12:25