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初夏の森を味わう、氷ノ山



ブナ林

今年は4月から夏日があったりで、季節の動きが早い。毎年、我が家の楽しみ
のひとつであるスズノコ(チシマザサのタケノコ)採りのタイミングも、今年
は図り切れないでいた。前週末がベストと読んでいたが、土日ともあいにくの
雨模様。一週間が経って、週後半に太平洋側を北上した台風2号の雨をたっぷ
り吸った氷ノ山のブナ林に向かうことにした。

金曜日は台風一過の晴天だったが、土曜日の朝は雲に覆われた。天気予報では
これからゆっくり回復に向かうという。直前になって仲間に声を掛けたが今回
は都合が合わず、妻たじまと二人で山に向かった。途中のコンビニで食料を調
達し、R482号を神鍋に上がる。氷ノ山に車で向かうのに、初めて利用する
ルートだ。昨秋開通した蘇武トンネルを抜け、渓流沿いに下ると村岡町でR9
と合流。しばらく南下して道の駅「ハチ北」から旧道に入り、別宮経由で鉢伏
高原に上った。八鹿町からR9を北上する従来のルートと所要時間に大差は無
かったが、退屈なR9よりこのルートの方がドライブの楽しみがある。

小中学校の集団訓練のシーズンで、小代越の登りを行く列を見上げ、高丸ピー
クの上から降ってくるヤッホーや歌声を聞きながら、我々も登りにかかった。
荒れた階段道を尾根に出るまで、かなりキツく感じられるようになった。歳の
せいにするのは簡単だが、普段の運動不足を自省すべきだろう。背中のザック
とは別に、首からデジタル一眼レフを下げ、腰には交換レンズを入れた大型の
ヒップバッグをつけているのが疲労を助長していた。しかし、今日の山行はす
べてE−1で撮ろうと、最初から決めていたことだから辛抱しよう。

尾根には爽やかな風があった。足元のスミレに目をやりながら、大平頭(オオ
ナルガシラ)の森が近くなる。尾根の途中で食事中のパーティをやり過ごす。
時計を見ると11時半、歩き始めて1時間が経過していた。道端で見つけた紫
色の植物をマクロレンズで狙う。後日、植物の専門家に*ヒメハギと同定して
もらった。

カッコウ、ホトトギス、ツツドリ、ジュウイチ、4種類のカッコウの仲間の声
が次々に聞こえてきた。いよいよ急登に入り、体全体でブナの新緑を浴びる。
頭上間近でカッコウが鳴いているが姿は見えない。張り出したブナの根階段の
向こうに空抜けが見えるともうひと踏ん張り。

登り切った分岐で息を整え、ホードー杉への道を辿る。今は立派な道標が立っ
てこの道も知られるようになったものの、氷ノ山登山客の殆どはわざわざこの
わき道に入ることは無いようだ。沢伝いの道はところどころで沢に消されるが、
流れに沿って下りてゆけば目的地に達する。ツクバネソウチゴユリユキザサ
などを育む大地には、昨秋落としたブナの実で敷き詰められていた。深閑の森
に聞こえるのは沢音と葉ずれの音。ときどきコルリのカラランという鳴き声が
転がってくる。

道が行き止まったところがいつものゴール。お湯を沸かす間にホードー杉を見
に行く。昨年の6月初め、霧雨の中でこの杉の幹周りを計測したことを思い出
しながら大木を一周する。大きな枝が折れていたのが気がかりだ。妻たじまが
笹薮で採ってきたスズノコを、皮をむいてお湯の中に放り込む。茹で上がった
アツアツにマヨネーズをつけて食べる。いつもの儀式であるが、初夏の森の味
を今年も味わえた幸せを二人でかみしめた。

帰路、家族や友人のためにスズノコを採集するのはもっぱら妻たじまの方。ス
イッチがONになってしまったと言いながら、夢中で笹薮を掻き分けている。
私は登山道で写真撮りながら彼女をサポート。シダのダンスギンリョウソウ
の目覚めなど、カットタイトルをイメージしながら撮影を楽しんだ。分岐まで
戻ったときには、そこそこののスズノコが集まっていた

再び鉢伏高原の尾根に出れば、見慣れたはずの鉢伏高原の風景は新たな感動で
目の前に展開しているのだった。往路で撮り残したスミレを撮影し、ゆっくり
と下っていった。

※撮影はすべてOLYMPUS E-1/ZUIKO DIGITAL 14-54mmF2.8-3.5,
                     *ED50mmF2.0Macro

 【 登山日 】04年5月22日(土)
 【 目的地 】氷ノ山ホードー杉
 【 山 域 】但馬
 【 コース 】鉢伏高原よりピストン
 【 天 候 】薄曇り
 【メンバー】妻たじま、たじまもり
 【 マップ 】持たず(エアリアマップ「氷ノ山」参照)
 【 タイム 】自宅9:10…鉢伏高原P10:35…小代越11:05…
       ホードー杉分岐11:50…ホードー杉12:15…P15:20