小代越(おじろごえ)でいつものように一息つく。鉢伏高原の稜線には爽や
かな風が渡っている。ヒバリの声が草原のあちこちから聞えてくる。その向
こうに氷ノ山のどっしりした山容。いい風景だ。
先をゆく妻たじまの小さな姿を、萬屋さんとゆっくり追いかける。氷ノ山に
向う稜線上から見る鉢伏山はいつも美しいと思う。何度も振り向きながら、
そのやわらかな緑のうねりに目をやる。
氷ノ山を望む |
鉢伏山を望む |
大平頭(おおなるがしら)の急登が近づいてくる。右の美方町の谷からアカ
ショウビンの「ヒョロロロ…」という声が聞えてきた。今年の初認だ。オオ
ルリ、カッコウ、ホトトギスなどの声もよく聞える。
いよいよ急登を一歩づつ踏みしめれば、登山道脇の笹薮にスズノコが目につ
くようになる。今年は季節が早く、ゴールデンウィークにはもうスズノコが
出ていたらしい。先週の予定を悪天候で一週間延ばした今日、スズノコ採り
には遅すぎると思っていたが、どうにか食べごろのものも少しは残っている。
ギンリョウソウ |
チゴユリ |
ギンリョウソウ、チゴユリが目につき始める。チゴユリは今が盛りのようだ。
登り切った台地が大平頭。少し先に避難小屋がある。誰かが急ごしらえした
看板がホードー杉への道を教えている。自分勝手なことを言えば、あまり
ホードー杉への沢道に人が入って欲しくない。ひっそりといつまでもそのま
まであり続けて欲しい、お気に入りの森がそこにあるから。
チゴユリに混じってユキザサの小さな花房も目に付く。ブナの林床は昨年落
としたブナの実で敷き詰められている。ずいぶん沢山実をつけたようだ。
沢沿いに下るとサンカヨウの大きな葉が迎えてくれる。1999年の同時期、萬
屋さんとこの森に入ったときに見つけた新鮮なツキノワグマの糞。スズノコ
だけを食べたと思われる糞だった。今日もツキノワグマの親爺が、侵入者た
ちをどこかで見張っているのかもしれない。
ユキザサ |
ホードー杉 |
ブナの森でキビタキが鳴いている。すぐそばではコマドリが美しく囀りはじ
めた。新緑が眩しいほど美しい。
「カタ・カタ・カタ…」
苔むした倒木の若葉に木漏れ日がさし込む。その光を横切って、木霊が首を
振りながら駆けていった。まさか…
ランチタイム |
茹でたてのスズノコ |
ホードー杉の入口でランチタイム。さっそくお湯を沸かして採れたてのスズ
ノコを茹でた。熱々にマヨネーズを掛けて頬張れば、これが最高にうまい。
スズノコを肴に、冷えたビールをこの森で飲むことこそ、今日の山歩きの目
的なのであった。この至福の時間は、木霊がくれた贈り物と信じようか。
【 登山日 】02年5月25日(土)
【 目的地 】氷ノ山山麓(大平頭のホードー杉)
【 山 域 】但馬
【 コース 】鉢伏高原中央駐車場よりピストン
【 天 候 】快晴
【メンバー】萬屋正右衛門さん、妻たじま、たじまもり
【 マップ 】持たず(エアリアマップ「氷ノ山」参照)
【 タイム 】自宅9:30…鉢伏高原駐車場10:33…小代越11:15…
ホードー杉分岐12:00…ホードー杉12:30-14:20…
小代越15:35…P16:05
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