冬を待つ鉢伏山


冬を待つ鉢伏山


 11月3日の試合を最後に、少年野球から退いたこたじま/YUUと二人で、鉢
 伏高原に向った。里山歩きは鉄砲撃ちが怖いし、遅い時間からでも手軽に歩
 けて気持のよい山は鉢伏山。途中のスーパーで食料を仕入れ、八木川に沿っ
 て谷を詰める。日を浴びて艶かに輝く里の紅葉が見事だ。
 
 ハチ高原山麓の民宿街を抜ける。荷台にいっぱいの大根を積んだ軽トラ、家
 の前の溝で大根の泥を落とす婦人。村はスキー客を迎える準備に追われてい
 る。林道を駆け上がり、いつもの中央駐車場に車を入れた。
 
 管理施設の綺麗なトイレで用を足し、ゲレンデを歩いて高丸稜線をめざす。
 中央ゲレンデの端に見えている銀シートの小山が気になる。シートの無い白
 い山もある。近づくにつれ、それが「雪」であることが分かった。銀シート
 は雪が解けるのを防ぐためのものだ。太いビニルパイプから、人工雪が勢い
 よく吹き出して山を大きくしている。触わってみると雪というより、それは
 「かき氷」だった。巨大かき氷が、ゲレンデに沿って並んでいるのだ。
 
 こたじま/YUUと雪玉を作って遊ぶ。彼が投げた玉を、トレッキングポールを
 バット代わりに打ってみる。目の前で雪玉がパシっと割れて、氷の粒がキラ
 キラと散った。時々同じ遊びを繰り返しながら、氷の山に沿ってゲレンデを
 登る。ゲレンデの氷ノ山! 振り返ると数日前に初冠雪を記録した本物の氷
 ノ山が、大きなシルエットとなって聳えていた。
氷の山と鉢伏山
氷の山と鉢伏山
ゲレンデに咲く黄色の花
ゲレンデに咲く黄色の花
 ゲレンデの所々には、ノゲシのような黄色い花が残っている。タンポポも一  輪咲いていたが、予報通りの暖かい冬になるのだろうか。スキー場関係者は  本物の雪が恋しいことだろう。中央クワッドリフトの終点で一服。リフトに  腰を下ろして行動食を口にする。足元の人工芝の中に、動物の糞がある。  先ほどもゲレンデの中に巨大な糞が落ちていたが、あの大きさからすればツ  キノワグマだろうか。    昨年はここから右に回り込んでヤブ漕ぎをしたが、今回は正しく左から踏み  跡をトレースする。小山を乗り越し、稜線の壁をよじ登ればすぐに尾根道に  飛び出る。尾根の小ピークを越え、山頂直下の西壁に向う。眼下のゲレンデ  に、先ほどの氷の山がずらりと並んでいるのが見える。
稜線から山頂西壁を望む
稜線から山頂西壁を望む
中央ゲレンデに並ぶ氷の山
中央ゲレンデに並ぶ氷の山
 西壁周辺はすっかり冬枯れて、一層殺風景さを増す。ゆっくり高度を上げな  がら時折後ろを振り返れば、長い稜線の景色がダイナミックだ。ほどなく山  頂。ゆっくり登って駐車場から1時間の行程だ。物足りない気分だが、先ほ  どからお腹が減った。さっそくランチタイムとする。氷ノ山が真正面に見え  る山頂リフト小屋の木のステージに陣取る。芝の上では中高年の一団が、賑  やかにやっている。    ラーメンとオニギリの昼食を食べつつ、氷ノ山から東に広がる展望を楽しむ。  先週登ったばかりの藤無山が、綺麗な三角形の山容を見せている。氷ノ山と  藤無山に挟まれて見えているのが阿舎利山、三久安山。藤無山の左手奥が千  町ヶ峰、段ヶ峰。須留ヶ峰も確認できるが、その他の但馬の山は霞んで定か  でない。    昼食後はハチ北方面の展望を楽しみに行く。色づいた瀞川山の稜線と、右手  にはお馴染みの妙見山、蘇武岳の稜線が連なる。眼下のハチ北ゲレンデから  も、人工降雪機らしき唸り音が絶え間なく聞こえている。どこのスキー場で  も、空の雪だけをあてには商売が成り立たない。今月末には、但馬の各スキー  場で人工雪ゲレンデが一斉にオープンする。
西壁より稜線を振り返る
西壁より稜線を振り返る
山頂から瀞川方面の展望
山頂から瀞川方面の展望
 山頂で過ごす間に、4・5人の縦走らしきパーティが通り過ぎ、犬を連れた  夫婦連れが軽装で上がってきた。ハチ北山頂リフトの向こうに見える、ステ  ンレス製の十字架の遭難碑が、日に反射して眩しかった。    大幹線林道の登山口に向って下山開始。小鉢のピークからブン回し尾根の絶  景を楽しんだ後は、20分ほどの階段道をあっけなく下り終える。途中、左  手のカラマツ林の黄色が美しい。右手の氷ノ山は、いよいよ影を濃くし、雲  の切れ間から差し込む光の筋が、山麓の紅葉を照らし出した。
日に輝くカラマツ林
日に輝くカラマツ林
氷ノ山のシルエット
氷ノ山のシルエット
 舗装林道を下りながら、沿道の植物に目をやる。花はほとんど無く、かさか  さと枯れ枝が風に音を立てた。時折見掛けたのは、名残りのヒメジョオン。  もうすぐ花を落とすことだろう。    ヘアピンカーブからゲレンデに戻る。左に大きな唸りを立てている建物があ  った。ここから4本のパイプがゲレンデに向っており、なるほど、ここが人  工雪の製造施設であることが分かった。かき氷の山は午前中見た時よりさら  に増えていおり、急ピッチでコース整備の準備が進んでいるようだった。    ハチ高原からの帰りは、いつもの通り、別宮の大カツラに寄ってみる。すっ  かり葉を落としたカツラの木の隣で、カエデの黄色が西日に輝いていた。  カツラの水を手ですくって一口戴いてから帰途についた。途中の酒屋で、二  週間前に買い求めて丁度飲み終わった銘酒「関のみやび」をお土産に買う。  助手席では、すっかり頼もしくなって山歩きを再開したこたじま/YUUが、  カーステレオに合わせてハモりを付けて歌った。私も一緒に歌いながら、家  路へと急いだ。
名残りのヒメジョオン
名残りのヒメジョオン
葉を落とした別宮の大カツラ
葉を落とした別宮の大カツラ
 【 登山日 】99年11月21日(日)  【 目的地 】鉢伏山(1221m)  【 山 域 】但馬山岳  【 コース 】鉢伏高原中央駐車場より時計周り周回  【 天 候 】晴れ  【メンバー】こたじま/YUU(小6), たじまもり  【 マップ 】エアリアマップ59「氷ノ山」  【 タイム 】自宅10:35…鉢伏高原P11:45-50…中央クワッドリフト終点        12:20-23…稜線12:30…小ピーク12:37(1115m)…山頂(1235m)        12:55-13:40…林道合流(1060m)14:03…鉢伏高原P(875m)14:37        (標高は腕時計の高度計の指示値)