新緑の山菜ハイク、阿瀬渓谷


 ゴールデンウィーク二日目、昨日ほどでもないが、今日も良い天気に恵まれ
 た。娘たじまは陸上競技大会、こたじま/YUUは少年野球の練習。残った3人
 で阿瀬渓谷に向った。キビタキやオオルリに出会うことを期待して、大き目
 のザックにフィールドスコープと三脚を詰め込んだ。途中のスーパーでの買
 い出しでは、ランチタイムの缶ビールも抜かりなく。

 林道での鳥見に期待して、奥の駐車場まで入らずに、発電所を見下ろす路肩
 に車を置いた。歩き始めると、さっそくオオルリとジュウイチの声が聞こえ
 た。スギの暗がりを行けば、ヤブサメがシシシシと鳴き、ミソサザイが華麗
 なソプラノを添えた。鳥の姿が見えれば、ザックからスコープを出そうと思っ
 ていたが、結局のところ金山廃村に着くまで役立たずに終った。

 駐車場の八重桜が満開で、花吹雪の中を山に向う。源太夫滝へ向う行楽ファ
 ミリーの数も多い。山道に入れば人影も途絶え、静かな山歩きを楽しむ。
 渓流に沿った道は、いつ歩いても気持ちが良い。澄んだ水の中では小魚が泳
 ぎ、水面に写った新緑の影が流れに揺れた。
新緑の渓谷を行く
新緑の渓谷を行く
マムシグサ
マムシグサ
 沿道にはスミレ、ヤマルリソウ、ネコノメソウ、マムシグサなどが目に付く。  シダ類の黄緑色の若葉も美しい。渓流からは、あいかわらずミソサザイの声  が聞こえ、山からはクロツグミの美しい歌声が聞こえた。  不動尊のつづれ折りを登れば、お堂横の古いミズナラの木は、とうとう枯れ  てしまっていた。この木の異変は、昨年の夏に気付いたものであったが、カ  シノナガキクイムシという甲虫による仕業らしい。寿命とはいえ、無くなっ  てしまうのは寂しい。
ヤマルリソウ
ヤマルリソウ
クサソテツの群落
クサソテツの群落
 お堂を過ぎれば、しばらく平坦な道を行く。湿地のザゼンソウはとっくに終っ  てしまっていて、今は緑の葉が美しい。日当たりの良い渓流側の台地には、  クサソテツの群落が見事だ。まだコゴミが採れるかもしれないと、群落の中  を探索すれば、僅かの若芽を見つけてビールのアテとして摘んだ。  本日の妻たじまの目的である、ワサビ摘みのポイント前の渓流べりで昼食。  お湯を沸かして、摘んだばかりのコゴミを放り込む。渓流で冷やしたビール  を煽れば、張り出した若葉が日を透かして美しい。マヨネーズがあれば良い  のだが、用意の無い今日は、茹で上がったコゴミをそのまま口に放り込む。  青臭い春の香りが、クンを鼻をついた。
渓流べりで昼食
渓流べりで昼食
若葉の緑が美しい
若葉の緑が美しい
 腹が膨れると、妻たじまはさっそく行動開始。普段は見せない機敏な動きで  目的地に突撃。少し遅れて追いかければ、無心にワサビを摘んでいる。少し  だけタイミングが遅かったようで、花の咲いたものが多かった。それでも、  家族で食べる分を集めるのに時間はかからなかった。  こたじま/GENは、湿地で見つけたイモリを持って遊んでいる。斜面に沿って  散策してみれば、シカだろうか、獣の新鮮な足跡が沢山残っていた。枯れた  ザゼンソウの仏焔苞を一つ見つけた。
ワサビ採りに夢中
ワサビ採りに夢中
ワサビの花
ワサビの花
 ワサビ摘みを終えて、ここで引き返そうという妻たじまを叱咤しながら廃村  まで足を延ばす。阿瀬渓谷を歩くことは、我々にとっては金山廃村まで歩く  ことなのだ。4月にここを歩いた友人の情報から、廃村最後の建造物である  分校が倒壊寸前だと知った。今日は、その様子をこの目で確かめたかった。    辿り着いてみれば、分校は半壊状態であり、今では懐かしい石炭ストーブが  妙に存在感を持って日に晒されていた。この建物は、豊岡の登山グループの  名の看板が掛けられて、しばらくは管理されていたようだったが、ここ数年  の間は利用もなく、朽ち果てるのを待つばかりとなっていた。今年の大雪で  一気に崩れたのだろう。    不動尊のミズナラ、分校跡。青少年の頃より何度も通ったこの谷に、当たり  前のようにあったものが次々と消えてゆく。自分の人生も、それだけ細くなっ  たと言うことか。溜息をつけば、分校を見おろす高い梢に、ヤマガラが飛ん  で来てツツピーと鳴き、つづいてコゲラがギーと鳴いた。
倒壊寸前の分校跡
倒壊寸前の分校跡
懐かしい石炭ストーブ
懐かしい石炭ストーブ
 分校前広場でスコープを出し、そのまま担いで山を下りるが、観察のチャン  スはついに訪れなかった。駐車地点に戻ればフジの紫が新緑に映えて美しく、  スコープ越しに一枚デジカメのシャッターを切った。    天気はゆっくり下って行くようで、雲の量も少し増えてきたようだった。
麓ではフジの花が美しい
麓ではフジの花が美しい
 【 登山日 】99年5月2日(日)  【 目的地 】阿瀬渓谷  【 山 域 】但馬  【 コース 】金谷よりピストン  【 天 候 】晴れ  【メンバー】こたじま/GEN,妻たじま,たじまもり  【 マップ 】持たず(エアリアマップ「氷ノ山」参照)  【 タイム 】自宅発10:26 → 発電所前P11:13-11:16(150m) → 登山口11:32         → 不動尊12:12(415m) → 昼食(420m)12:21-13:28 →         金山廃村(480m)13:43-14:04 → 不動尊14:26 → 登山口15:02         → 発電所前P15:24        (括弧内の標高は腕時計内蔵の高度計の指示値)                         ○▲▲たじまもり▲▲☆