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我が家の春は、三川山のカタクリを見、阿瀬渓谷の緑に癒されて進行してゆく のが常だったが、もう、その春山の巡礼は思い出だけのものになってしまった。 鹿に荒らされた三川山のカタクリ自生地で溜息をついたあと、翌週末の阿瀬渓 谷で昨年同様の喪失感を味わうことになった。それでも、いつか、山は元の姿 に戻ってゆくことを信じながら、今回の記録を残してゆく。 キャンプ場入口の路肩には数台の車。下りてくる駐在のミニパトとすれ違った から、車上荒らしの警戒にあたっているのだろう。山肌の荒廃ぶりが凄まじい。 いつもの八重桜を過ぎて振り返った様子。斜面の草はすべて食い尽くされ、む き出しの表土が山を壊してゆく。 岩壁沿いでヒメレンゲを見つけてレンズを向ける。源太夫滝を見ながら山道に 入る。いくつかの滝を超えて、ようやくニリンソウの群落が出てきた。シカの 忌避植物だから、かろうじて食われず残っている。 不動滝の急登、林床はテツカエデの緑が残るのみ。じいちゃツリーを通り過ぎ る。不動尊を超えた沢沿い、クサソテツの群生地は昨年見たままの状態。対岸 のフッキソウの群落だけが、場違いのようにグリーンベルトを形成している。 春が早かった今季は、ザゼンソウはとっくに終わっていた。林床の食害に目を そむければ、新緑の山肌はいつものとおり美しい。 廃村手前の最後の登りで、ヤマカガシがアズマヒキガエルを飲もうとしている シーンに出会う。電池切れのデジカメから、妻のiPhoneに切り替えて撮影。 廃村で少し遅い昼食。シカの糞で敷き詰められた東屋の屋根の下でラーメンを 啜り、来た道を引き返す頃には空は雲に覆われた。花はすっかり姿を消してし まった渓流沿いは、オオルリの声があちらこちらで聞こえてきて、少しは気持 ちを慰めてくれるのだった。 撮影:P340 【 登山日 】15年4月29日(水) 【 目的地 】阿瀬渓谷 【 山 域 】但馬 【 コース 】キャンプ場〜廃村金山ピストン 【 天 候 】晴れのち曇り 【メンバー】たじまもり夫婦 【 マップ 】持たず(エアリアマップ「氷ノ山」参照) 【 タイム 】P11:35…廃村13:10-13:40…P14:50 |