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シーズン最初の山歩きは、今年もホームゲレンデの阿瀬渓谷から。通行止めのバ リケードのあるキャンプ場入口の路肩に車を止めて歩き始める。穏やかな春の日 差しを浴びながら渓流沿いを行けば、オオルリの声が天から降ってくる。 奥の駐車場にある八重桜も見頃に咲いている。山道に入りゆっくり高度を上げて ゆく。ほどなく、妻の革の登山靴のソールが剥がれるアクシデントが発生したが、 片足のソールを外した状態で歩行を続ける。結局、帰り道でもう片方のソールも 剥がれてしまい、グリップの効かない足で最後まで歩き続けることになった。 イタリア製の靴だったけど、品質はイマイチのようだった。 歩くほどに、山の印象がいつもの春とは違うことに気づいてゆく。木の緑は変わ らないのに、林床の緑がすっかり失われているのだ。不動尊下の爺ちゃんツリー に挨拶を残して急登を登りきれば、開けた風景はさらに殺伐としたものとなる。 いつものコゴミの群落地はすっかり土だけで、川向うのフッキソウだけが緑を保 っている。昨春は、そうだと気づかずに歩いた阿瀬渓谷の異常な世界。今回は改 めてその深刻さを身にしみて感じた。そう、すべてはシカの仕業なのである。 登山路沿いに春の花がほとんど目に付かないまま、暗澹たる気持ちで廃村金山に 到着。ここの広場も緑は失われ、東屋のベンチの縁にはおびただしいシカの糞が 落ちていた。ここで昼食を済ませ、来た道を戻る。村外れの平地もこの通り。 斜面はシカの食べないアセビだけが残っている。湿地にはザゼンソウが多く目に ついたが、どうやらシカはザゼンソウも食わないらしい。 それでもと気を取り直して、戻り道では花にレンズを向ける。 オオカメノキ ミヤマカタバミ ニリンソウ ハシリドコロ マムシグサ キケマン ヤマルリソウ コチャルメルソウ ムラサキサギゴケ キランソウ ヤマエンゴサク 源太夫滝付近では、子供たちの水遊びの歓声が賑やかだった。 かつては「花の回廊」と呼んで、この季節の山歩きを楽しみにしていた阿瀬渓谷。 今回感じた大きな喪失感は、子供たちのはしゃぎ声でなお一層深まってゆくよう に思えるのだった。 撮影:D7000+SIGMA17-70mm 【 登山日 】14年4月27日(日) 【 目的地 】阿瀬渓谷 【 山 域 】但馬 【 コース 】金谷P〜廃村金山ピストン 【 天 候 】晴れ 【メンバー】たじまもり夫婦 【 マップ 】持たず(エアリアマップ「氷ノ山」参照) 【 タイム 】P10:38…廃村12:20-13:05…P14:40 |