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晩秋の渓谷歩き、阿瀬渓谷



不動尊下の急斜面

我が家の山歩きには不文律のようなものがあって、春は阿瀬渓谷で始まり、秋
は扇ノ山で終わるというのがパターンである。今回、珍しく晩秋の阿瀬渓谷を
訪ねたのは訳あってのことだ。

12時過ぎ、いつもの場所は駐車の列で一杯であった。何かイベントでも行わ
れているのかと思ったが、紅葉狩りの人々のものであった。紅葉の阿瀬渓谷に
これだけの人が訪れるとは予想もしていなかったので、静かな山歩きを期待し
ていた我々はちょっと当惑ぎみ。

多くの人は散策路を源太夫滝まで歩いている。家族連れ、お年寄り、一番目に
付くのが三脚を持ったカメラマン。週末までにまとまった雨が降り、水量の増
えた渓谷に紅葉という組み合わせを狙ってのことだろう。

滝見の東屋を過ぎると人は減るが、それでも沢山の人が山道を行き交っている。
20分ほど歩いたで、空腹を充たすためにコンビニ寿司を空ける。人心地つ
いて歩行再開。カラン橋の上から下流の廊下を撮る。の下には必ずカメラマ
ンが三脚を立てているといったあんばい。

登山路の整備が進んでおり、歩きやすくなっている。いつもは通過するだけの
竜王滝に寄ってみた。不動尊の絶壁から大量の水を落として迫力があったが、
水量が多過ぎて渡渉が困難。滝全体を見上げるポジションまで移動できずじま
い。ここにも何組かの人がいた。

わき道を本道まで戻り、急斜面の登りにかかる。トチノキはすっかり葉を落と
し、ぽっかりと空間を作っている。その空間を埋めるように周囲の山の紅葉が
照っている。さて、このトチノキを選んで、根元に父の遺骨を埋めてやった。
氷ノ山、蘇武岳、扇ノ山と続いた慰霊の山歩きも、今期はこれで最後となる。
来春、カタクリの咲く三川山へ連れていったらお終いにしようと思っている。

不動尊から先の道も、春の風景とは違った佇まいを見せる。道々に花が無いの
が寂しいが、秋には秋の山歩きの楽しみがある。突然眼の前に現れた工事現場。
廃村金山への入口に掛かる橋の架け替え工事であった。たしかに、あの土橋は
穴も開いて崩落の危険があったが、ここをわたると金山に着いたという到達感
があった。時代の流れではあるけれど、金山最後の住人冨山さんが、山を下り
るときに振り返って泣いたあの土橋が、もう無くなってしまった。かたわらの
倒木には食べられそうなキノコが出ていた。

迂回路から仮設橋を渡り廃村金山に入る。なんと、分校が無くなってしまった。
倒壊の過程を毎年見てきたが、とうとう跡形もなく建物が片付けられてしまっ
た。あたりも整備が進んでおり、この先、公園っぽく変わってゆくのだろうか。
土橋と分校と、いちどに大事なものをなくしたような気持ちだ。
過去の記録写真から、分校跡の変遷ぶりを見ておく。
1998年3月:11年前は全体の形を保っている
2004年4月:大雪で屋根が落ちてしまった
2005年4月:かろうじて半分残っている
2006年4月:とうとう倒壊してしまった

冨山さんのお宅にお邪魔して、コンビニお握りとカップ麺で昼飯の続きをする。
登山姿の若いカップルが下山していった。金山峠か、蘇武岳まで行ってきたの
かもしれない。食後のコーヒーを入れたあと、我々も来た道を引き返す。

金山側から見た橋の工事。来春ここに来るときは、新しい橋を渡ることになる
だろう。不動尊を囲む紅葉に目をやる。不動滝への崖道を入り、手持ちで何と
かスローシャッターを切る

下るほどに再び人が増えだす。この時間から登ってくる人もいる。源太夫滝周
辺は相変わらず賑わっており、出発地点の車もまだたくさんあった。
新しい命が芽吹く来春、また静かな阿瀬渓谷歩きを楽しみたいと思っている。

撮影:D90+SIGMA10mmFE,VR18-200

 【 登山日 】09年11月15日(日)
 【 目的地 】阿瀬渓谷
 【 山 域 】但馬
 【 コース 】バンガロー入口路肩〜廃村ピストン
 【 天 候 】晴れ
 【メンバー】妻たじま、たじまもり
 【 マップ 】持たず(エアリアマップ「氷ノ山」参照)
 【 タイム 】P12:10…不動尊上13:20…廃村13:50-14:15…P15:25