トップたじま川日記>このページ

川の上から洪水を検証す(Part I)



円山川上郷河畔林をゆく

2004年10月20日、当地方を襲った台風23号(アジア名:TOKAGE)に
よる大洪水は未曾有の被害をもたらした。多くが語られ、様々な反省がなされ、
そして被害状況の検分と今後の治水対策が計画された。しかしどうだろう。洪
水でリセットされた川風景を、川の上から検証した人がいるのだろうか? 私
たちの川を川の上から見直す作業は、ここで長く遊ばせてもらっている自分た
ちの役目ではないだろうか。今年の川遊びは、そんな意義も持ちながらスター
トを切った。

前週末に初認したノビタキは田んぼでも見かけるようになった。ソメイヨシノ
も一気に花を開き、山々はタムシバの白を光らせている。朝の鳥見をしながら
9時過ぎに隣町の艇庫へ。天気は快晴。気温もこれからグングン上昇する気配。
もう1名の漕ぎ仲間の到着を待ちながら、Koh!氏の自宅や職場の洪水被害を写
した写真を見せてもらった。改めてあのとき起こったことの凄まじさを思った。
完全に水没したご自慢の地下ホール、壁に残った喫水線で水の量を知った。

やがて萬屋氏が現われ、ぼちぼちと準備を始めた。買出しを済ませ、とうとう
見つからなかったルーフキャリアのM6蝶ネジをホームセンターで調達し、艇
をカートップ。Koh!氏と私は当然のごとくキィウィ2を選び、萬屋氏は自艇の
ダンサー。久しぶりのカヌーのカートップは要領をすかり忘れてしまっていて、
勘を取り戻すのにしばらく時間がかかった。

約8キロ上流の上小田橋まで艇を運ぶ。今日のゴールはKoh!氏の自宅裏の河原
なので段取りは簡単だ。にも関わらず、2時間の準備時間を想定して11時出
艇としていたのが1時間以上も遅れてしまった。まあでも、これも「想定内」。
大水で削られた右岸で出発の記念写真を撮ってから川に入った。

緩やかな流れに乗って伊佐橋の広いバックウォーターへ漕ぎ込む。河岸は右も
左も根こそぎ倒れたヤナギが重なり、それでも春の芽吹きを忘れない樹木の命
を思った。ウグイスが鳴き、ツバメが空を行く。水面から舞い上がるのはコガ
モとヒドリガモ。おっ、右岸の倒木から飛び立ったのはミサゴ。食事の邪魔を
されたようで、飛んだ足には魚がしっかり掴まれていた。

伊佐橋下流のブロック堰堤を越える。雪解けを集めた川の水はまだまだ冷たい。
本コースで堰堤越えはこの一箇所。あとは全て乗艇のまま漕げる。車からのス
カウティングでコース取りを決めていた通り、堰堤下から左岸沿いに下る。
桜堤のサクラが堤防から頭を出して並んでいるのが美しい。右岸でも左岸でも
今日はサクラがあちこちで咲き誇り、雲ひとつない青空の下でお花見川下り。
もう最高の気分である。

寄宮のスロープを右岸寄りで漕ぎ下り、左岸の瀬に乗って再び本流に入る。こ
の瀬が本コース唯一の緊張どころ。岸にはルアー釣りが4名ほどいて、突然の
カヌー出現に驚いた様子だった。この瀬で萬屋氏の沈を密かに期待していたが、
何事もなく漕ぎぬけてきたのが残念ではあった。このあたりでお昼にすること
を決めていたので適当な場所を探す。右岸は流木やゴミが累々と積みあがった
まま。左岸の原野は膨大な量の砂で埋まっていた。しかし、洪水の後で道路か
ら見下ろした悲惨な光景は、芽吹いた緑と一面のセイヨウカラシナの黄色に彩
られてその景色を柔らかなものに変えていた。

気持ちよさそうな場所を見つけて上陸。まずは焚き火をおこしてキスをあぶる
のがいつものお約束。川下りのビールというのは、ビールが最も美味しいシチュ
エーションの一つである。その場限りの四方山話をしながら、川風の中でだら
だらと過ごす贅沢な時間。この時間のために川下りをやっていると言ってしまっ
てもよいくらいだ。ここで2時間弱の時間を過ごした後ゴールを目指す。進美
寺(しんめじ)山をバックに記念撮影。

宿南の瀞場も洪水によって地形が変化した。左の水路は土砂で埋まり、本流が
広い幅のまま日高町に流れ込む。右岸堤防の向こうは特に浸水被害の大きかっ
た赤崎の集落。3人のパドラーそれぞれが、あのとき起こったことをフラッシュ
バックさせながら今日の風景と重ね合わせてみる。寡黙なまま赤崎から江原に
かけてのコースを漕いでゆく。

架け替えられた赤崎橋を初めてくぐり抜ける。岸ではノビタキが我々の通過を
見送ってくれた。稲葉川と合流して江原の町並みが溶岩壁の上に近づく。崖淵
のケヤキの高い枝に引っ掛かったままのゴミを川から見上げる。(トップ写真)
そして水面が4〜5mもせり上がったあのときの円山川のことを改めて思うの
であった。

16時過ぎ、予測した通りの時間でゴールした。この河原へのアプローチ道も
洪水で崩れてしまっていた。足場の悪い崩壊場所を越え、倒れたまま綺麗に咲
いたソメイヨシノを見ながらフネを艇庫まで運び上げ、本日のツーリングを無
事終了した。次回はここからスタートして、下流の様子をしっかり見てこよう
と計画している。

※川下り中の撮影はすべてNikon E5000+WC-E68

 【 行動日 】2005年4月9日(土)
 【 河 川 】円山川
 【 流 域 】兵庫県北部
 【 コース 】上小田橋(八鹿)〜 すのーべる淵(江原)
 【漕行距離】約8Km
 【 天 候 】快晴
 【メンバー】Koh! on Keowee2, 萬屋正右衛門 on Dancer, 
       たじまもり on Keowee2
 【 タイム 】艇庫11:57…上小田橋12:14-12:28…伊佐橋堰堤12:59…
       宿南原野13:28-15:17…赤崎橋15:48…すのーべる淵16:11
 【 川情報 】・伊佐橋ブロック堰堤下は左水路
       ・寄宮堰堤は右水路が良い。左は流れの中に障害物あり
       ・寄宮左岸寄りの瀬から漕ぎぬけ