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春の円山川はKeowee2な気分で


 5月最初の日、五月晴れの爽やかな天気となった。昨年の8月末に円山川を  下って以来の久しぶりの川。今シーズンも、4月はとうとう漕ぎに出なかっ  たし、なんとなく年相応な川との付き合い方になって行くような気がする。  この天気、久しぶりの川。セコセコと漕ぐ気持ちになれなかった。  「今日はキィウィ2な気分だなあ」  Koh!(元すのーべる)さんも、久しぶりのキィウィ2を選んだ。  艇庫の棚から降ろした2艇のキィウィ2をカートップすれば、船底に桟があ  たっていた部分が大きくへこんでおり、保管方法の不備を反省しながら上流  に向った。Koh!さんの奥方が、車の回送を買って出てくれたのはありがたかっ  た。寄宮の河原に車を入れ、河原のハーブを摘む彼女に見送られながら出艇。  小さな堰の瀬に乗って、大きな静水域に滑り込む。久しぶりのパドリング、  水の感触をしばらく確かめる。照り付ける日差しに熱くなった手を時々水に  くぐらせれば、まだ少し冷たく感じる水温が気持ちが良かった。堤防国道は  連休の行楽車がひっきりなしに続き、それを時々見上げながら我々は川の上  で風を感じていた。  右岸の進美寺山の急斜面は萌葱色の影を川面に落とし、ウグイスの鳴き声が  パドルの水音に混じりあった。風は相変わらず背中から吹き、艇は楽々と瀞  場を越えて、やがてザラ瀬を滑り下りた。
宿南の瀞場を行く
宿南の瀞場を行く
瀞場からのザラ瀬
瀞場からのザラ瀬
 赤崎橋下の橋脚ブロックに乗り上げても、ひょいと飛び降りてズリ降ろす。  再び流れに艇を入れて飛び乗る。余計な神経を使わずに済むのが何より良い。  赤崎の河原のストレートから、水量が少なくてだらしの無いクランクの瀬で  左の瀞場に流れ込む。かつては白鷺のコロニーだった林は、今はアオサギの  住処になっているようだ。巣の上から、アオサギたちの警戒の声が聞こえた。    サギのコロニーを過ぎた右岸の河原に上陸。ランチタイムとした。いつもの  作法で、ウィンナーを茹でながら缶ビールを開ける。昨年と違っているのは、  隣のKoh!さんが全くアルコールをやめてしまったこと。最近の彼の口癖は  「飲まない自分に酔っている」という名言。太陽を顔に受けながら、乾杯と  やれないのは少し寂しい。彼のミネラルウォーターのペットボトルに、缶を  当てて一人ビールを飲む。「美味い!」 この場面では、水より、絶対にビー  ルが美味いと思う。  茹で上がったウインナーをアテにビールを飲みつつ、出汁のきいたお湯でカッ  プラーメンを作る。またもや箸を忘れてきた。そこいらの竹を折ってきて箸  にする。Koh!さんと交わす河原での会話は、会社のことであったり、人生の  ことであったりする。川で交わす会話は、どうしてこんなに素直なんだろう  かと思う。川の音、山の音、風の音が、人の音をやわらかく変えてくれるの  だろうか。
赤崎橋通過
赤崎橋通過
右にアオサギのコロニー
右にアオサギのコロニー
 ゆっくり過ごした後、出艇。ハンドル名を変えても、この名前だけは変えな  いでおこうと言った、通称すのーべる淵を過ぎる。Koh!さんの家の屋根が見  える。淵の出口のザラ瀬の様子は、昨年の台風の大水で少し変わっていた。  日置橋を過ぎ、いつも気にするミクリの自生する入り江も、土砂で完全に埋  められてしまっていた。もう、ここのミクリも駄目になってしまったのだろ  うか。    風が海からに変わり始めた。鶴岡橋を越え、土居の堰堤に向うバックウォー  タを漕ぐ手が少し辛い。干上がった堰堤のコンクリートの上をライニングダ  ウン。堰堤下の、弱い、しかしながら今回のコースで一番のラピッドを漕ぎ  下る。右岸の河畔林の新緑が美しい。再び広がった静かな川面には、行き遅  れたマガモやホシハジロの小集団が浮かんでいた。    かつての、すのーべる氏が詩人になる島は、やはり土砂が堆積して河原と陸  続きになってしまっていた。それでも、ここでコーヒーを飲まない訳には行  かない。南に向いて、川の上に広がる大きな空と山並みの変わらぬ姿を見な  がらコーヒーを啜る。変わり行くもの、変わらないもの、人の生きざまに重  ねながら、しばらく静かな時間を過ごした。
土居の堰堤越え
土居の堰堤越え
詩人の島も陸続きに
詩人の島も陸続きに
 「エンバはどうしてるのかな」  「今はブリスベンで元気に暮らしているよ」  とびきり明るいNZ娘二人と下った、あの時の彼女たちの歌声をもう一度こ  の川で聞きたいと思った。そういやあ、我々のNZランド・カヌー旅行も、  今年は見送ってしまったよな。    川が突き当たる引野の堤防から、護岸工事の重機のうなり声が聞こえてきた。  本当に必要な工事なのだろうか。好きだった景色が、また一つ壊れてゆく。    上石の河畔林を左に見て、再び堤防国道が近づく。ゴールはもうすぐだった。  運動公園の河川敷は、セイヨウカラシナの黄色い絨毯。突然、オオヨシキリ  の声が聞こえてきた。「あ、もう来ている」    八代水門を過ぎれば、いよいよ海風が強まり、右岸の護岸ブロックに艇を寄  せて上陸した。夕暮近くの日差しは弱まって、着替えの素肌に風はまだ少し  だけ冷たく感じた。車の横に転がした2艇のキィウィ2が、春からやがて夏  に向おうとする川風景の中で、なんだかとても絵になった。
正面に引野地区の護岸工事
正面に引野地区の護岸工事
セイヨウカラシナのお花畑前
セイヨウカラシナのお花畑前
 【 行動日 】99年5月1日(土)  【 河 川 】円山川  【 流 域 】兵庫県北部  【 コース 】寄宮河原(八鹿)〜 総合運動公園(豊岡)  【漕行距離】約12.5Km  【 天 候 】快晴  【メンバー】Koh!(元すのーべる) on Keowee2、たじまもり on Keowee2  【 タイム 】寄宮河原12:00 → 赤崎橋12:35 → 江原手前右岸12:50-14:05        → すのーべる淵14:20 → 日置橋14:30 → 鶴岡橋14:50 →        土居堰堤15:05 → 上郷橋15:18 → 詩人の島15:21- →  【 川情報 】・ライニングダウンは土居堰堤のみ        ・98年の台風で川の様子がかなり変わっている