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川には風が吹いていた



円山川上郷河畔林をゆく

川遊びから実に2年間も遠ざかってしまった。左肩に続き右肩の四十肩で腕が
回らなかったり、一番の漕ぎ仲間であるKoh!氏が勉学中だったり、言い訳をあ
げればきりがないが、最大の理由は自分自身のテンションダウンということだ。
この2年間、すっかり鳥に呆けてしまって、他のいろいろなことを犠牲にして
きた。幾度となくKoh!氏と「漕がないとなぁ…」と呟きながらも、いったん遠
ざかってしまった遊びに戻るのはそう簡単ではなかった。

いろんなきっかけが重なって、久しぶりの川下り再開。この日、我がコウノト
リ市民研究所で引き取ることになった中古のファルトボートの進水式も兼ねて
いる。同じ構造のファルトを持っている萬屋氏が艇庫で組立指導してくれた。
インターバルがあいていても、装備や準備の感覚は残っているものだ。今日は
何やらイベント*が行われるらしい六方水門に車を回送し、買出しを済ませて
艇庫に戻る。「出発までにえらい時間がかかるんですね」と、本日の進水式で
初めてリバーツーリングを体験する市民研究所の濁酒氏。我々の川下りは、準
備の時間からすでに始まっているのだ。

艇庫から河原まで艇を運ぶ。重い、暑い。途中で何度も地べたに艇を下ろしな
がら、すっかり体力も衰えてしまったことを感じる。濁酒氏がファルトボート
に御神酒をかけ、残りを回し飲みして川遊びの安全祈願。9時に艇庫に集合し
てもやっぱり出発はいつものお昼前になった。

円山川公苑で一度カヤックに乗ったことがあるだけ、という濁酒氏。特に漕ぎ
方を教えるでなく、危険性について教示するわけでなく、ベテラン3名の実地
指導というとで行こう。ファルトボートの安定性と、コースを熟知している我々
流の初心者教育。

今日の川下りには専属カメラマンが途中まで伴走してくれた。Mr.Y氏は私
の鳥仲間であるが、今日の撮影を快く引き受けてくれた。出艇時に携帯で連絡
を入れ、日置橋を通過**する我々をまず撮ってくれた。S字に蛇行して神鍋の
溶岩壁**の淵。出発から35分で鶴岡橋*を通過、そこから20分バックウォー
タを漕ぎきって蓼川堰堤に達した。

前日の上流の夕立で水量は十分だった。この季節は干上がっている堰堤のコン
クリートの上を水流が舐めている。ここまで何の問題もなく下ってきた濁酒氏
だったが、実は大変大きな支障を我慢してきたのだった。組立時にシートが正
しく固定されておらず、彼はキールの骨組みの上に尻を下ろして漕いできたの
だという。「カヌーって、ずいぶん尻が痛いもんやなぁと思いました」、夜の
反省会で彼が笑わせてくれたが、その不具合もここで修正。フィッティングを
確認して堰堤下の瀬に入った。

ファルトにとってはこのコース最大の難所である。流れの中に溶岩が点在し、
張り付きや擦りに注意が必要だ。瀬の上と下にベテランが待機し、濁酒艇の初
めての瀬を見守る。思い切りよく瀬にまっすぐ突っ込めば問題の無い流れであっ
たが、少しの躊躇で艇が横を向き、そのまま水中の小さな岩に引っかかった。
横で見守っていた萬屋氏がすぐさまレスキューに向かい、艇を下流に向けて押
し出し事なきを得た。上郷橋で待ち構えていたMr.Y氏が瀬を抜けて下って
くる我々を撮ってくれる。右岸の河畔林**で有名なこのスポットは我々漕ぎ仲
間のお気に入り風景。

上郷橋のブロック越えも豊富な水量のお陰で楽勝。この先、河口まで障害物は
ない。河畔林のストレートで爺さんが独り鮎網を入れていた**。仲間の3艇が
先を下ってゆくのを見送り、左岸に車で入ってきたMr.Y氏と少し話をして
から後を追った。ザラ瀬を下った中ノ郷の瀞場で待ってくれていた仲間と合流。
左岸の小さな丸石河原で遅いランチタイムとなった。

メインディッシュは相変わらずラーメン。定番のウィンナーと焼き鳥缶詰をア
テに冷えたビールが最高に美味い。クーラーボックスは私のキィウィ2のバウ
シートで運んできた。二人艇のシングルユースは、いつも母船として活躍して
くれるのが頼もしい。焚き火を起こすのも儀式である。これまた定番の焼きギ
スをあぶる。質素な食材が、川下りのランチタイムには最高のご馳走になる。
久しく忘れていた至福の時間を小さな河原で過ごした。

今日のゴールはこの先が長い。1時間ほどで腰をあげ再び下流を目指す。西芝
左岸河畔林を見送り上石の護岸ブロックを通過。運動公園前を右岸寄りに進む
が、小さな瀬にデッキを食われた萬屋艇が私の目の前で静かに沈。彼の弁解に
よれば、先のビールが残っていたからだそうだが、まあ、他人の沈は見ていて
面白いからどんどんやって欲しい。

蓼川大橋をくぐると完全な静水域に入る。岸辺のヤナギは美しいけど単調な漕
ぎとなる。「あのカモは何?」と聞かれて、前方の小さな2つの点を双眼鏡で
確認する。遠すぎて確信が持てないが、あの茶髪のカモはカワアイサに見えた。
冬鳥のカワアイサが真夏の円山川に? 今後のフィールドワークで気にして見
ようと思う。

午後からの海風が厳しいコースであるが、この日はほとんど問題なかった。
円山大橋の上から、部活帰りの息子たじまが我々を見つけて声を掛けてきた。
残念ながら「とーちゃん!」と声を掛けた相手は萬屋さんで、私は少し遅れて
橋を通過したので息子の姿はすでに消えた後だった。

堀川橋をくぐれば右岸の六方水門がゴール。道路からは気づかなかったが、川
から見る六方水門と排水施設は川の要塞のように威圧的に建っているのだった。
朝、準備が進められていたイベントの後片付けもほぼ終わりの様子であった。
川と親しむためのイベントだったようだが、「今日、私たちはたっぷり川と親
しんで来ましたよ」と、祭りの後を無言で見つめるのだった。

上陸地点の護岸で萬屋氏が最後の沈を披露してくれ、今回は足が滑ったからだ
という弁解を聞きながら、この日の川下りを楽しく終えることができた。17
時に中年会の温泉付き飲み会のバスが出るからと、次の集合場所に急ぐ濁酒氏
を見送ったのが定刻10分前。残ったメンバーで片付けを進め、萬屋氏からは
ファルトの分解手順を教授願いながら、川の余韻を楽しむのだった。

地上では、今日も一日うだる暑さだったろう。でも、私たちが下ってきた円山
川には、いつも爽やかな風が吹いていた。次は誰とこの風を分かち合おうか。

※写真提供:*濁酒氏,**Mr.Y氏
      その他の写真はすべてE5000+WC-E68

 【 行動日 】2004年7月17日(土)
 【 河 川 】円山川
 【 流 域 】兵庫県北部
 【 コース 】すのーべる淵(日高町)〜 六方水門(豊岡市)
 【漕行距離】約13Km
 【 天 候 】曇り時々晴れ
 【メンバー】濁酒 on SS-1, 萬屋正右衛門 on Dancer,
       Koh!夫妻 on Keowee2, たじまもり on Keowee2
 【 タイム 】すのーべる淵11:50…鶴岡橋12:25…蓼川堰堤12:45…
       昼飯13:50-14:55…蓼川大橋15:30…円山大橋16:05…
       六方水門上陸16:50