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鳥たちと出会う秋の円山川


 今シーズン三度目の円山川は、前回と同様、スペシャルゲストを迎えての川
 下りとなった。このところ、こういったイベントでも無い限り、積極的に川
 に出ようと思わなくなってしまった。歳を取ったと言うには未だ早いけど、
 体力の衰退は着実に気力を萎えさせてゆくものらしい。

 スタートまでいろいろあって、ともかくも、萬屋さんと私とが先行して赤崎
 橋の河原から出艇することに。ラピッド前の釣り師に遠慮して、美味しいと
 ころをミスしたのが悔しいが、久しぶりに川に浮かぶ感覚が嬉しい。水の透
 明度が上がって、川底まで見えるのが気持ち良い。弱い流れの中、フェリー
 グライドでサイクロンを右から左、左から右へと滑らせながら、ダンサーの
 萬屋さんを待った。

 萬屋さんのダンサー、中古で1万円で手に入れたのがご自慢だ。前オーナー
 が丁寧に乗っておられたようで、初期モデルながら、ブルーのボディはまだ
 美しさを保っている。萬屋さんが入ってきたところで下流に向う。さきほど
 雨粒がパラパラと落ちてきたが、今は止んで、このまま天気は持ちそうな気
 配だった。前方の瀬の中に鮎釣り一人。右の水路に入って迂回する。水路に
 入り込んだ途端、こちらに向ってきたヤマセミと鉢合わせ。空中で大慌てで
 Uターンして遠ざかった。川面では、イカルチドリがピピピと鳴いてネコヤ
 ナギの陰に消えた。

 瀬の先の瀞場では、舟で網を入れている二人連れ。先日の新聞に、円山川で
 尺物のアユが獲れた話題が載ったが、大物の落ち鮎狙いだろうか。江原の溶
 岩壁に沿って進めば、ケヤキ並木の向こうに青いハッピ姿の少女たちが居て、
 我々に手を振ってくれた。今日は日高町の秋祭り。先ほどから、太鼓の音が
 鳴り続けている。

 右の水路からすのーべる淵に滑り込む。本流との合流はパワーがあり、フェ
 リーで入るも、あえなく流されてしまった。ここのボイルは相変わらず気持
 ちが悪い。萬屋ダンサーも、少しバランスを崩しながらここを越えた。
 左岸の河原に上陸。ランチタイムとする。

 茹でたソーセージをほお張りながら、メインディッシュのパスタを茹でる。
 スパイシーで美味しいソーセージに、ビールの無いことを二人で悔しがった。
 萬屋さんが一人で小さな焚き火を作り、気分を盛り上げようと努力した。
 今回は焼くものが無くて残念だったが、小さな火でも、あるだけで気持ちが
 暖かい。
焚き火をおこす萬屋氏
焚き火をおこす萬屋氏
パスタを茹でる
パスタを茹でる
 たっぷりのスパゲティを食べ終わって一息ついた頃、本日のゲストがKoh!さ  んとともに現れた。昨夜、Koh!さん宅のホールでコンサートを開いた、コン  トラバス奏者の奥田一夫さんと、その若き愛弟子の岡田さんという女性だ。  挨拶を交わすなかで、奥田さんにとってはネットの中の私は既に知られた存  在であることが分かり、奇遇に驚いた。奥田さんは、時々私のホームページ  を見てくれており、後の会話で分かったことであるが、山仲間を集めたメー  リングリストのメンバー同士でもあった。ネット社会の中で、世間はますま  す狭くなっていることを実感した。  ともあれ、奥田さんは著名な演奏家なのだが、残念ながら、クラシック音楽  にはトンと縁遠い私には、その偉大さが分からない。目の前の奥田さんは、  髭面のアウトドア好き親爺にしか写らない。午前中は持参のMTBで神鍋界  隈を走って来たのだとおっしゃる。逞しく鍛えられた筋肉は、実際のお歳よ  り確実に10歳は若く見える。MTBで鍛え上げた体で演奏されるバスの音  は、さぞや力強く鳴り響くのだろう。昨夜のコンサートを聞き逃したことを  少し残念に思った。  サイクロンを艇庫に上げ、代わりにキィウィ2を河原に下ろす。Koh!さんの  キィウィ2に奥田さん、私のキィウィ2に岡田嬢、それぞれがバウシートに  収まった。奥田さんにとっては初めてのカヌー。しかし、そこはさすがにア  ウトドアマン。すぐにKoh!さんと息の合ったパドリングを見せてくれた。  私の艇の岡田さんは、何度か別のボートに乗った経験があるようだったが、  リバーカヤックは初めてとのこと。彼女のパドリングも、時間とともに上手  くなって行った。
ゲストを迎えて出艇準備
ゲストを迎えて出艇準備
鏡のような川面を漕ぐ
鏡のような川面を漕ぐ
 川岸に沿ってヤマセミが緩やかに飛び立ち、カワセミが川面を一直線に飛ん  だ。ヤマセミは個体数を増やしているのだろうか。以前に比べ、川で出会う  チャンスが確実に増えているように感じる。何度もアオサギが舞い上がり、  冬鳥のコガモ、マガモも観察した。上郷の河畔林からは、季節外れのアブラ  ゼミの声が聞こえた。  上郷橋下流の左岸で休憩。缶ビールを開け、おしゃべりに花が咲く。向かい  の河畔林からイカルが鳴いた。その上空を行く鳥の群はアトリだろうか。  突然現れてブーメランのように飛ぶ速い鳥はハヤブサだろう。今日の川は、  沢山の鳥に出会える。
鶴岡橋通過
鶴岡橋通過
河原の休憩タイム
河原の休憩タイム
 最後の30分、人工物の見えない川景色の中を、静かに下ってゆく。パドル  の音と、時折ジャンプする魚の音。 「いいですね」、シャンプーの匂いを  揺らせて岡田さんが呟いた。柔らかな秋の川景色が我々の前と後ろに広がっ  て、ススキの穂の向こうでモズがキチキチと高く鳴いた。  運動公園手前のゴールは、夕暮れが迫ろうとしていた。左岸の堤防の上には、  祭りの幟がはためき、神社杜の上で餅まきをする人の姿が見えた。白い餅が  舞う度に、人々のどよめきが聞こえた。右岸に上陸し、ゲストお二人の満足  げな表情が、カメラに収まった。
ゴール地点で記念撮影
ゴール地点で記念撮影
 【 行動日 】2000年10月8日(日)  【 河 川 】円山川  【 流 域 】兵庫県北部  【 コース 】赤崎橋河原(江原)〜 運動公園(豊岡)  【漕行距離】約8Km  【 天 候 】曇り  【メンバー】奥田一夫さん & Koh!さん on Keowee2 岡田さん & たじまもり on Keowee2        萬屋正右衛門さん on Dancer  【 タイム 】赤崎橋河原12:25…すのーべる淵河原12:45-13:30…        運動公園手前河原16:30